社員は会社に思いやりある対応を期待します。しかし、それは感謝して欲しいという意味ではありません。では、経営者は社員をどのように扱えばいいのでしょうか?
自分の会社の社員のことを"家族のようなものだ"と言っているすべての社長は、どうも勘違いをしているようです。本当の家族であれば、年上の先輩社員は若い後輩社員に与えて与えて与えて、与えられた後輩社員はそれを有り難いとも思わないということになります。
"情に厚い"上司に部下は忠誠心を持たない
最近の「Academy of Management Journal 」に載っていた研究で、社員は大変な時期に精神的に支えてくれた、いわゆる"情に厚い"社長や上司に対して、違う方法で会社を運営している社長や上司に対するよりも、忠誠心を持っていないということが分かりました。
国際経営開発研究所とロンドン大学の研究者による研究では、期待の不一致の問題が起こっていると報告されていました。経営者が、共感しながら話を聞き、思いやりのある言葉をかけている時は、その社員に早く落ち着きを取り戻し、仕事を再開して欲しいと思っているでしょう。
多くの経営者は、社員が一生懸命働いたり、長く働いてくれていることへの感謝を表そうとします。一方で社員は、何かに対する見返りとしてではなく、経営者が常日頃やらなければならない仕事の一環として、思いやりある言動を期待します。
この研究で質問に答えた人の75%は、上司から精神的に支えてもらったことがあると答えました。回答者には、平社員も中間管理職もいました。しかし、それに対して何の恩義も感じていませんでした。一方で上司は、優しい言葉や態度を取れば、期待以上の見返りや反応が得られると思っています。「誰かに飲み物を買ってあげたら、次回は相手が自分に買ってくれると期待するようなもので、それは職場以外のあらゆる場面で期待することだ」と回答者は不満げに言いました。
会社での人生について感傷的になるつもりはありませんが、職場の人間関係が冷たいものように聞こえるかもしれません。上司のStacyさんが、すすり泣くEileenさんにティッシュを渡しながら、なぐさめの言葉をかけている時、「あと何週間彼女に仕事を頼めるだろうか?」と心の中で計算していると思いますか? 部下のEileenさんは、Stacyさんはそのためにお金をもらっているようなものだから、自分の話を何時間も聞いてくれるのは当然だと思うでしょうか? この2人のどこが悪いというのでしょうか?
経営者も社員も「一個人」でいるべき
誰もが同じようにお金がすべてだと思っている訳ではありません。コロラド大学の最近の研究では、金融危機の時に従業員にお金を貸す経営者は、見返りとして忠誠心を期待している、ということが分かりました。そして、実際に忠誠を尽くしてもらっています。研究者は、お金を貸したことがある社員を抱えている経営者はラッキーだと言っています。経営者が、優れた社員に内々でお金を貸すことがよくあったとしても、別に驚くことではありません。
ウォートンスクールのAdam Grant教授の言葉で、このような研究における経営者というのは"マッチャー(調和させる人)"だとあります。彼らは喜んで寛大になりますが、その見返りも期待しています。お金を貸す代わりに忠誠を期待する経営者もマッチャーです。しかし、個人的な支援をするのを良しとする人たちは、上司としての自分の役割を、自分が受け取る以上のものを与えたいと思っている"テイカー(引き受ける人)"だと思っています。楽天的で素敵な与える男は、多くの人が"ギバー(与える人)"になれば、組織や世界はもっとより良い場所になると思っています。実際、Academy of Management Journalに載っていた研究では、"キリスト教の寛容の教え"を元に行動していると言っている経営者がいました。なぜならそれが"正しいこと"だからです。しかし、そのように考える人は少数派でした。
私は、経営者も社員も、純粋に人としてこのような状況を見て、一個人として思いやりの手を差し伸べ、感謝の気持ちを受け取るべきだと思います。しかし、ほとんどの場合、経営者や雇用者がそれを避けているように感じます。
親密さや馴れ合いが仕事上の関係に入り込むことには、危険がつきものです。経営者は、知らない方がいい社員の私生活も詳しく知ることになるかもしれません。社員が弱っている時は、仕事のパフォーマンスが落ちても大目に見るとほのめかすかもしれません。社員の置かれている状況が通常の状態に戻った時に評価したり訓練をしたりし、客観性と必要な距離感を無くしてしまうかもしれません。しかし、目の前で身も心もズタズタに傷ついている誰かを見たら、クビにすることはできませんよね?
教訓:過剰な期待はしないこと
個人的に肩入れをすることなく、苦しんでいる社員を助ける方法があります。勤務時間に自由度を与えるのです。その方が楽だと言うのであれば、しばらく家で仕事をさせるのもいいです。会社全体の思いやりファンドを設立し、どんな社員でもそこからお金を借りることができるようにすれば、誰かが個人的にお金を貸す必要が無くなります。
誰かを幸せにするためにできることなら何でもやってあげたいと、自然に思える心優しい経営者もいるでしょう。それはほんとうに素晴らしいことです。しかし、繊細な状況で上司が大ナタを振るうと、破壊してしまう恐れがあります。国際経営開発研究所のAnand Narasimhan教授は、「おそらくすべてに言える教訓として、過剰な期待はしない方がいい」と言っています。さらに付け加えるとしたら、親切にしつつも、仕事だという意識を忘れないようにしましょう。
How Caring Should a Boss Be? | Inc.com
Leigh Buchanan(訳:的野裕子)
life hackerより引用しました。
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