2013年9月21日土曜日

『半沢直樹』だけじゃない! 漫画・アニメの“決めゼリフ&倍返し”作品集


TVドラマ『半沢直樹』が大ヒットし、決めぜりふ「倍返し」は2013年の流行語大賞に選ばれそうなほど。視聴率30%超え、ドラマのヒットで原作小説もミリオンセラー突破、さらに海外でも話題になるなど、その勢いはとどまるところを知らない。

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 そこで今回は、半沢直樹にハマった人におススメな「決めぜりふ付き、現代が舞台の“倍返し”」ストーリーを漫画・アニメからチョイスしてみた。

『ジョジョ』作者の鮮烈な連載デビュー作!  『魔少年ビーティー』

 ●決めぜりふ 
「くらわしてやらねばならん!  然るべき報いを! 」

 意外に知られていないが、『ジョジョの奇妙な冒険』作者・荒木飛呂彦の初連載は紛れもない“倍返し”のストーリーだった。今からちょうど30年前、1983年に週刊少年ジャンプで連載された『魔少年ビーティー』である。

 主人公は通称ビーティーと呼ばれる小柄な少年。クールで知的な顔立ちだが、実はとんでもなくクセが強い、良心ゼロの性格破綻者。彼が牙をむくのは、自分に暴力を振るった者、自分を陥れた者たち。いじめっ子や通り魔的なサイコ野郎はもちろんのこと、憧れの女子生徒に色目を使ったイケメンのように「それは逆恨みでは…? 」な相手までさまざまだ。

 怒りがピークに達して「然るべき報いを! 」と口にしたビーティーの復讐方法は一切の容赦がなく凄絶。高レベルな手品の技術、そして医学や心理学、ハッタリも駆使して相手を肉体的・社会的に再起不能に追い込む。

 あまりにダーティな作風のため少年ジャンプには合わないと編集者たちから叩かれ、連載そのものがお蔵入りになりかけたと言われる曰くつきの一作。だが読んでみると新人とは思えないほど実力が飛び抜けていることに驚かされる。

 また、『ジョジョ』キャラの原型が見られるのでファンにもおススメ。主人公ビーティーはディオの冷酷さ、ジョナサンの誇り高さ、そして復讐に使用するトリックの数々がジョセフのモデルになっていると思われる。善良な友人の「公一くん」などはジョジョ第四部に出てきた「康一くん」そのままだったり、元ネタ探しがなかなか楽しい。

頭脳で戦う現代の仕置人 『怨み屋本舗』

 ●決めぜりふ 「しかるべく」

 作者は栗原正尚。2000年から始まり、今なお第4シリーズが連載中という息の長い漫画だ。過去に何度かドラマ化もされている。

 主人公は本名を隠し“怨み屋”と名乗る黒髪の美女。彼女が営む怨み屋の稼業は「多額の報酬と引き換えに、怨んだ相手を抹殺する」というもの。抹殺には2種類あり、社会的抹殺か実質的抹殺を依頼者が選べる。「放火で殺された家族と同じように、相手にも同じ苦しみを与えて焼き殺してほしい」など、えげつないオプションの指定も可能だ。

 依頼されるミッションはどれも難易度が高いが、怨み屋本人のすぐれた能力と、彼女がひきいる情報屋・工作員たちのサポートで鮮やかに片づけていく。

 基本的に相手を抹殺するためには手段を選ばない怨み屋だが、彼女の仕事には決められたルールがある。「正義感だけで依頼は受けない」「自分は直接手を下さず頭脳プレーで相手を抹殺する」「もし依頼人が裏切った場合、厳しいペナルティを与える」といったもの。

 とりわけ頭脳プレーへのこだわりは見事で、ターゲットを徹底的に調べあげて弱点や性格を把握し、完璧な方法で抹殺してのける。本来まったく無関係だった2人のターゲットを誘導して殺し合わせ、同時に2つの依頼を片づけるエピソードなどは読んでいて鳥肌モノだった。

 作中で主人公たちが利用する裏の手口――個人情報の売買ルート、盗聴盗撮デバイス、戸籍偽装、クローン携帯の作り方なども妙にリアル。これらを駆使して極悪人を追い詰めていく展開はカタルシスいっぱいだ。

 また、作中でキャラクターの口を借りて語らせている「なぜこの日本では加害者ばかり手厚く保護されるのでしょうか? 」「まじめに生きてる人間が損する社会はいつか破綻するぜ」といった言葉の重さには同意せざるをえない。これはおそらく作者の本音だろう。だからこそ“悪党を狩る悪党” 怨み屋の存在が光るのだ。

 難点は復讐ターゲットとなる悪人を真性のクズとして徹底的に描写しているので、読者によっては強烈な不快感を催すところだろうか。『闇金ウシジマくん』に耐えられる人なら問題ないので、ぜひ読んでみてほしい。

オカルト要素が強めの復讐ファンタジー 『地獄少女』

 ●決めぜりふ 
「いっぺん死んでみる? 」「この怨み 地獄へ流します」

 漫画版の作画担当は永遠幸。少女漫画誌「なかよし」で2005年に連載が始まり、今年まで続いていた。ほぼ同時期に放送スタートされたアニメ版がおそらく一番有名で、こちらは第3期まで制作。ほかにはドラマ、ゲーム、小説、果てはパチンコ機種にまで広くメディアミックスされている。

 主役を務めるのは閻魔あいと名乗る謎の美少女。依頼人が強い怨みを抱き、都市伝説を信じて「地獄通信」というウェブサイトに相手の名前を入力すると、目の前に閻魔あいが姿を現してワラ人形を渡す。この人形に巻かれた糸を解くことで契約成立となり、憎い相手はすぐさま地獄へ送られる。

 この作品のユニークでおもしろいところは、依頼の代償がお金ではないこと。相手を確実に地獄へ送れる代わりに、依頼人も「死後は魂が地獄へ送られて永遠にさまよう」ことが事前に閻魔あいから告げられるのだ。だから依頼人はワラ人形を受け取りながら、ぎりぎりまで糸を解くか解かないか悩む。結局ほとんどの場合、たびかさなる理不尽な仕打ちに耐え切れず糸を解いてしまうのだが。

 契約が成立すると「多くのペットを見殺しにした悪徳獣医は、みずからも手術台に載せられ麻酔なしの手術を受けさせられる」といった具合に、ターゲットは自分の悪事に見合った苦痛を体験したあとで地獄へ流される。

 ただしこの作品では、なかば逆恨みや誤解で地獄に行かされる人もいて「この相手は本当にそれほど悪人だったのだろうか? 」と思わされることもある。また、相手が極悪人だったとして「依頼人が自分の地獄行きを代償にしてまで裁くほど、この悪党に価値はあったのだろうか? 」という感想を抱くことも。毎回ほぼストーリー構成が決まった水戸黄門のような作りだが、“倍返し”が正しかったのかどうかを含め、いろいろ考えさせられる深い話である。

 なお、漫画とアニメは同じ原案であっても違いが大きく、今から入門するならアニメ版がお薦め。男性ファン向けに閻魔あいのビジュアルが妖艶なデザインにされていたり、人気声優・能登麻美子のウィスパーボイスで「いっぺん死んでみる? 」と囁くシーンが異様に怖かったり、楽しめる要素が多い。

殺人許可証を持つラーメン屋!?  『殺し屋麺吉』

 ●決めぜりふ 「天誅ラーメン 毎度あり」

 先の3タイトルよりも知名度は低いかもしれないが、個人的に高評価なので紹介。暗殺者+ラーメン屋というただでさえ異色の取り合わせに“復讐(天誅)”の要素を加えたユニークな漫画だ。

 終戦直後の混乱期。のさばる悪党たちに手を焼いたGHQは、ある日本人に“殺しのライセンス”を与え、闇の始末人に仕立てあげた。ラーメン屋台をひく暗殺者の通称は、殺し屋 麺吉。「天誅ラーメン 一丁」というキーワードで依頼を受け、あらゆる悪を葬り去った。主人公はその殺し屋からすべての技術を受け継いだ、二代目・麺吉である。――こんな突拍子もない設定だが、これがなかなか非常におもしろい。

 二代目は長髪を後ろで束ねた気のいい兄ちゃんで、ラーメン作りと殺しの腕前は天下一品。法では裁けない悪党に虐げられた弱者が“ラーメン屋台をひく凄腕の殺し屋がいる”との噂を信じ、死の間際に麺吉へ「天誅ラーメン 一丁」と言い残す。そこから麺吉は情報通のチャイナ美女・リンレイからサポートを受けつつ悪党に迫り、最後はラーメンの出前を装って暗殺するのだ。

 この作品のユニークなところは2点ある。まず主人公は私怨ではなく他人のために、大金をもらわずとも“義の心”だけで危険な殺しに挑む。正義を理由にした依頼を一切受けない『怨み屋本舗』とは見事に対照的だ。

 そして一番の特徴はラーメン屋という設定をフルに活かしたところ。依頼を受けるのはラーメン屋台を引きながら。敵地に潜入するのもラーメンの出前を装って。「本当に美味いものを食べたとき、人はその心の闇をすべて吐き出す」という言葉通り、ラーメンを食わせながら悪事をすべて聞き出してしまう。やがてターゲットが汁をすべて飲み干したら、丼の底から“天誅”の文字が出現。そこから戦闘開始となる。

 ただで殺されるターゲットだけではなく、武器を持って決死の反撃をしてくる者もいるが、ここでもラーメンを題材にした暗殺アイテムが大活躍。菜箸、ナベ蓋、練りに練った防弾性の麺生地……コミカルな奥義で敵を圧倒し、最後はオカモチ(出前の料理を入れる鉄製ケース)で首を切り落としフィニッシュ。思わず読者は「ラーメン屋強ぇよ! 」と驚かされること請け合いだ。

 作者の富沢順は大ベテランだけあって作画・構成力とも安定感が抜群。どういうわけか全6巻のコミックスが半端なところで終わっているが、そこを差し引いても十分に楽しめる。この作者は過去に『企業戦士ヤマザキ』が実写化された経歴をもつので、この“倍返し”ブームに乗っかって本作のメディアミックスにも期待したい。


ネタりかより引用しました。

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