2013年8月29日木曜日

大画面化で勃発した「一体どこまでがタブレットなのか?」論争

企業の購買担当者は2013年秋、タブレットやタッチスクリーンの境界が一段と曖昧になり、ますます混乱することになりそうだ。
 米Appleの「iPad」、米GoogleのAndroidを搭載したタブレットの驚異的な成功を目の当たりにして、タブレット市場に殺到した米Microsoftなどの後発ベンダーは、タブレットの本来あるべき姿よりはるかに大きなサイズのデバイスを開発することで、タブレットの再定義をもくろんだ。
事実、タブレットは、「ラップトップより小さく、スマートフォンより大きいデバイス」という業界の定義から、ノートPCなどが搭載するモバイル機能を多く取り込んだウルトラモバイルPCなどを含む方向へ変貌してきた。
 Microsoftは、最新の「Windows Certification Newsletter」(Windows認定プログラムの最新情報を伝えるニュースレター)の中で、認定タブレットの定義をより狭め、スクリーンサイズが17インチ以下のシステムに限定すると宣言した。認定パートナーによると、こうした定義が出てきたのは、Microsoft独自のタブレットの定義に、バッテリーを搭載したタッチベースのオールインワンデバイスが含まれるからだという。だが、それらは実際のところモバイルデバイスといえるものではない。
 むしろ、Microsoftがタブレットというカテゴリーに置くハイエンドの17インチモデルは、重量級デバイスとでもいうべきものであり、一般的なモバイルデバイスと比べるとかなり異質だ。巨大な“コーヒーテーブル”型のタブレットは、一般企業向けというよりも、どちらかといえばグラフィックスなどの業種特化型アプリケーション向けの製品である。
 2013年第4四半期、ベンダー各社はさまざまなタイプのタブレットや低価格のタッチ対応ノートPCを発表すると予想されている。これらの製品は、果たしてタブレットとは何か、あるいはタブレットではないものは何か、という境界をますます曖昧なものにしていくだろう。
いずれにしても、業界のタブレットのセグメンテーションは、折りたためばタブレットとなり、平らな場所でキーボードが着脱可能になるなどのハイブリッドなクライアントPCをベンダーが投入するたびに変更される移動標的のようなものだ。もっとも、こうしたクライアントPCは、7.9インチの「iPad mini」や9.7インチのiPad、あるいは新しく発表された7インチの台湾ASUSTeK Computer製「Nexus 7」、韓国Samsung Electronics製「GALAXY Tab 3」などと比較すれば、まだ大きい。
 アナリストたちは、タブレットのあるべき姿についてさまざまな意見を持つが、少なくとも17インチよりはずっと小さいものであるべきだ、と口をそろえる。
 「定義は常に変化している。現在はタブレットと“タブレットPC”の違いをどうするか、見極めようとしている段階」と語るのは、米調査会社Gartnerのコンシューマーテクノロジー・マーケティング担当リサーチ副社長、カロリーナ・ミラネシ氏だ。同氏は、タブレットは最大でも12インチまでだと主張する。
 他のアナリストも、その意見に同意している。
 「10インチ以上になると、もはや卓上コンピュータだ」と、モバイル専門の調査会社、米Sepharim Groupのチーフアナリスト、ボグ・エーガン氏はいう。
 タブレットは、スマートフォンよりは大きく、しかし非常に軽量でフル機能搭載のクライアントPCライクなデバイス、すなわち「MacBook Air」のようなウルトラノートPCほど重くも高価でもなく、モバイル性能の高いデバイスを求める市場ニーズに合致する。
 ノートPCにはこれまで、重量とバッテリー寿命に課題があった。だが米IntelのHaswellやSSDなどの技術の登場により、こうした問題は重要ではなくなりつつある。可搬性、バッテリー寿命、インスタントオン機能、「Windows 8」などのフル機能OSなど、タブレットと非タブレットの境界はますます曖昧になりつつある。
一方でエーガン氏によると、ベンダー各社は現在、過剰に割高ではないコンバーチブルタイプ型のモデルを開発中だ。「恐らくそれらは一定の市場シェアを獲得するだろう」と同氏は語る。タブレットやハイブリッド、ウルトラモバイルPCなどのボリュームマーケットにおいて今後も旺盛な需要が続けば、ベンダーのハードウェアの利益率は下落する可能性がある。
 Gartnerでは、タブレット市場が2013年におよそ68%成長するとともに、出荷台数は全世界で2億180万台に達すると予想。2014年には2億7600万台を超えると見ている。米市場調査会社のIDCは、タブレット販売は2013年に58.7%の成長を見せ、出荷台数は2億2930万台に達し、2015年までにノートPCなどのポータブルPCとデスクトップPCの販売を上回ると予測する。
 だがベンダーには、企業の購買担当者がモバイルデバイスの戦略を確立する前にしなければならない大きな仕事が待ち構えている。
 「セグメンテーションのための分類は必要だが、それよりも重要なのは、エンドユーザーのニーズに向けたデバイスのマッピングだ」と語るのは、Samsungのエンタープライズビジネス部門マーケティングディレクターのジェニファー・ランガン氏である。
 「企業のIT部門は、エンドユーザーセグメンテーションの視点からモバイルデバイスにアプローチする必要がある」とランガン氏は同氏は語る。IT部門はエンドユーザーを理解し、彼らの仕事をデバイスにマッピングする(対応付ける)ことで、会社の収益に貢献しなければならないという。
 「1つで全てに対応する“万能型(one-size-fits-all)”の時代は終わった」とエーガン氏は指摘する。
ITmediaより引用しました。

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