2013年8月6日火曜日

「半沢直樹」「Woman」… 反響呼ぶ夏ドラ


□「やられたら倍返しだ!」痛快な勧善懲悪
7月に始まった民放ドラマが熱気を帯びている。TBS系「半沢直樹」は回を追うごとに視聴率が増し、4日の第4話は27.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。続編やシリーズ作が目立つ一方、日本テレビ系「Woman」など注目を集める新作もある。日本大の中町綾子教授(42)とともに、中盤にさしかかった夏の連ドラの魅力を探った。(三品貴志、本間英士)

■現代版「水戸黄門」

「半沢直樹」(日曜午後9時)は直木賞作家、池井戸潤さん原作のドラマ。上司の策略で窮地に立たされた銀行員、半沢(堺雅人)が、融資に失敗した5億円を取り戻すため知恵と足を使い“敵”に立ち向かう。半沢の「やられたらやり返す。倍返しだ!」という決めぜりふが話題になり、第4話ではエスカレートする攻防で「10倍返し」も宣言された。

銀行内の組織や人間関係は複雑で、「裁量臨店」(内部検査)といった専門用語も登場する。ただ、伊與田(いよだ)英徳プロデューサー(46)は「舞台設定は取っつきにくいが、お金は人の感情をあらわにするもの。単なる経済ドラマではなく、家族を背負ったサラリーマンの生き方を丁寧に描きたい」と強調する。

実際、行員の家族模様や社宅での妻たちの力関係にも焦点が当てられ、登場人物に奥行きがある。一方、宇梶剛士、片岡愛之助らが演じる敵役の演技や人物設定はアクが強く、「悪役は悪役に徹してもらう」と伊與田氏。「上司の失敗は部下の責任」「経営をなめるなよ」といった飛び交うせりふも印象的だ。
中町教授は「悪を描くことが難しい時代に、『水戸黄門』のように勧善懲悪で猥雑(わいざつ)な世界観が表現されているのが魅力。出演俳優が重厚で色っぽく、映像からジトっとした情感がにじみ出ている」と評価。「堺さんの決めぜりふの演技は、歌舞伎の『見得(みえ)』のよう」とも指摘し、メリハリのきいた演出や展開が「痛快さ」を与えているようだ。



■「重い」「暗い」でも…
 群像劇でもある「半沢直樹」とは対照的に、「Woman」(水曜午後10時)はシングルマザーの生活を軸に据えたヒューマンドラマだ。脚本は「Mother」「最高の離婚」などを手がけた坂元裕二さん。夫に先立たれ、子供2人を育てる小春(満島ひかり)が、貧困や病気といった苦難に見舞われながら懸命に生きる姿を描いている。

 子連れの小春が通勤電車で乗客から舌打ちされたりと、胸に刺さる場面が相次ぐ。中町教授は「シングルマザーをめぐる社会的な背景を描くだけでなく、巧みな描写を積み重ねることで、登場人物の細かな感情を浮き上がらせている。視聴者に『つらさ』や『厳しさ』を共有させる脚本に迫力がある」と話す。
ただ、視聴者からは「小春が不幸すぎる」といった感想も上がっているようだ。次屋尚(つぎやひさし)プロデューサー(48)は「『重い』『暗い』とよくいわれるが、重いドラマもあっていいのでは」と苦笑いし、「命をかけて子供を守る、女性の本能的な強さを妥協せずに描きたい」と力を込める。
 ■常に新しいものを

 続編やシリーズものでは、前作のキャストや設定をほぼ踏襲したテレビ朝日系「DOCTORS」などがある一方、フジテレビ系「ショムニ2013」は出演メンバーを大幅に変更。同「救命病棟24時」は新たに女性救命医、楓(松嶋菜々子)を中心に据えるなど、「語り口」に対する姿勢はさまざまだ。

 中町教授は続編ものについて「よく作り込まれた質の高いものが多く、視聴者も安心して見られる」と話す一方、「『水戸黄門』でも汚職やいじめといった時事問題を取り入れるなどして、絶えずメッセージや語り口を模索していた。続編でも常に新しいものを求める努力は続けてほしい」と要望した。
産経ニュースより引用しました。

0 件のコメント:

コメントを投稿