2014年1月26日日曜日

接近するコンビニとスーパー 取捨選択…互いの強みどう生かすか

コンビニエンスストアが総菜や生鮮食品などの品ぞろえを充実させてスーパー市場への侵食を強める中、首都圏が中心だった「都市型小型スーパー」が関西で増え始めている。コンビニの倍以上の店舗面積を生かし、高齢者や女性、単身者などをターゲットに品ぞろえを強化。「スーパーならでは」の強みを生かそうと躍起だ。対するコンビニは有機野菜販売など次々と新たな商戦を展開しており、都市部では業態を超えた小売り競争が激化している。

 「スーパーは『日常使い』の対象ではなくなりつつある」。近畿圏を中心に展開するイズミヤの広報担当者はこう危機感を募らせる。経済産業省の「商業販売統計」によると、総合スーパー(GMS)の売上高は、平成13年には約8兆6千億円だったが、23年には約6兆2千億円にまで減少。一方、コンビニは約6兆7千億円から約8兆7千億円に、ネットを含む通販は約2兆5千億円から約4兆7千億円に伸長した。いつでも購入できるコンビニやネットの手軽さや利便性が、スーパーの市場侵食につながっている状況は明確だ。

 調査会社「マイボイスコム」が昨年5月にインターネットで実施した調査では、コンビニ利用者のうち、コンビニで生鮮食品を購入する人は29・1%。高年齢の女性に多く、50代以上の女性では4割にものぼった。購入商品は「牛乳」が最も多く、「カット野菜」「卵」「くだもの」「葉物野菜」などが続いた。

 コンビニ各社は総菜など食品を中心に自社企画(PB)商品の開発を推し進め、「スーパー化」が進んでいる。今年度の青果販売額を7年前の10倍の500億円と見込むローソンでは、全店の6割超にあたる約7400店舗で、丸ごと1個の野菜や果物などを扱う「生鮮強化型店舗(生鮮コンビニ『ローソンストア100』を含む)を展開中。こうした店舗は近年、年千店のペースで増加中だ。

 攻勢を強めるコンビニに対し、「コンビニ化」したスーパーも出始めた。イズミヤは昨年10月、ファミリーマートとの一体型店舗1号店を大阪市生野区にオープン。スーパーがファミマのフランチャイズチェーン(FC)加盟店となった珍しいケースだ。

 売り場面積は一般的なコンビニの2倍以上だが、イズミヤで最も小さい食品スーパー(標準店で約1千平方メートル)の半分以下の約400平方メートル。できたての総菜や生鮮品など、スーパーならではの商品をそろえ、もちろん24時間営業。店内には食事ができるイートインスペースを設けたほか、Wi-Fiも導入し、利用者の滞在時間と購入機会を増やす工夫を凝らした。

 競争相手のコンビニとあえてコラボしたのは、コンビニのノウハウを取り込むことで、今後の小型店戦略に弾みをつけるため。だが、オープン後の出足はやや鈍く、「スーパーとしては物足りない感があり、コンビニ使いにとどまっている」(広報担当者)など、課題も見え始めている。同社は状況を見極めつつ、今後の戦略を練る構えだ。

 「フレスコ」を運営するハートフレンド(京都市下京区)も、単身世帯などを狙ったコンビニ型の「フレスコミニ」や、女性向けの「フレスコプチ」を近畿の都市部に5店舗展開。総菜や弁当など、拡大する「中食」市場をめぐり、スーパー業界では「コンビニ化」による顧客争奪戦が激化している。

 一方、「阪急オアシス」を展開する阪食は、「コンビニにないスーパーの強みは厨房(ちゅうぼう)。生かさない手はない」(志水孝行・店舗企画室長)と、高齢者や単身世帯をターゲットに絞り込んだ上で、コンビニにはない機能強化による差別化を図っている。

 同社は売り場面積660~990平方メートルの店舗を「都市型小型店」と位置づけ、大阪市内を中心に約20店を展開。昨年12月にはJR関西本線「東部市場前駅」徒歩5分の場所に、売り場面積902平方メートルの「阪急オアシスくまた店」(大阪市東住吉区)をオープンさせた。

 同店は、21年から展開を始めた新コンセプトの都市型店「高質食品専門館」の一つ。生鮮品の対面販売やメニュー提案などが特徴で、「滑り出しは好調」という。少子高齢化で、縮小傾向は確実の国内小売市場。好調なコンビニ業界でも市場飽和がささやかれる中、限られたパイをめぐり“スーパーらしさ”“コンビニらしさ”の取捨選択をどう見極め、高めるかが各業界の課題となりそうだ。(田村慶子)

yahooニュースより引用しました。

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