2014年1月31日金曜日

ダサくて古い、けどクセになる『天誅』のこってり味

「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。

 金曜の午後8時がこってりしている。

 テレビ東京では 北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎という濃厚なおじさん俳優たちが主演する『三匹のおっさん』が放送中。そしてフジテレビでは『天誅~闇の仕置人~』というドラマが始まった。

 「戦国時代から現代にタイムスリップした女忍者とその用心棒たちが、現代にはびこる悪に敢然と立ち向かい活躍する姿を描くアクションドラマ」という設定もスゴいが、何より目を引くのが、その胃もたれしそうなキャスティングだ。

 古武術師範の竜次に京本政樹、元空き巣でどんな鍵でも8秒で開ける弁当屋の辰に柳沢慎吾、七色の声を持つスナックのママ・ミツ子に三ツ矢雄二と、なんとも漫画チックでコントみたい。主演の女忍者・サナには、連続ドラマ初主演の小野ゆり子を抜擢。大森南朋の妻で、前クールの『刑事のまなざし』(TBS系)での好演が記憶に新しい実力派女優だが、主演が一番地味だ。極めつきは、サナを世話することになる正子役に泉ピン子。かなりのこってり具合である。

 1月24日に放送された第一話は、冒頭から選挙演説に通りかかったピン子の「何が庶民を助ける党だよ」という悪態から始まる。「アンタ、あたしたち党立ち上げない?」などと友人と軽口を叩いていると、突如、通り魔が住民を襲い始める。「キャー」という悲鳴に反応したピン子は「キムタクでも来てるんじゃないのぉ? ロケで!」と間の抜けた勘違いで現場に駆け寄り、「ええっ?」と過剰に驚くのだ。なんともダサい。古い。そこにフードを目深にかぶった女が、建物の上からムダに回転しながら降りてくる。「殺すなら、私を殺せ……」とつぶやきながら。女は華麗なアクションで通り魔から子どもを助け、去っていくのだ。

 その後、道端で空腹で倒れていたその女を家に連れて帰ってきたピン子。「アンタさ、水戸黄門の由美かおるみたいね。忍者みたい。私、村田正子。アンタ、名前は?」と尋ねると、女は「サナダ……サナだ」と答える。すると、「裏切り、欺瞞、嘘。この世に人がいる限り悪ははびこる。なぜなら人の欲望こそが悪の正体だから。彼女の名はサナ。雇い主の命令によってしか生きられぬ悲しい運命(さだめ)を背負った女。だが、彼女がどこから来てなぜここにいるのか、その答えは誰も知らない」という余貴美子によるナレーションが入りオープニングクレジットが流れるという、どこか懐かしい80年代の大映ドラマを彷彿とさせる演出。

 サナは言う。

「(今まで)契約をしてきた。飯をもらう代わりに。なんでも言うことに従う。命じられたことはなんでも。人を殺せと言われればそれも。そうやって生きてきた」

 物語は、夫の暴力に悩む妻が逃げこんできたDVシェルターでボヤ騒ぎが起きたところから始まる。夫のDVや嫌がらせはエスカレートしていくが、警察は逮捕に消極的で頼りにならない。そうこうしているうちに、ついに夫が妻を襲いにやってくる。彼女の悲鳴を聞きつけたサナは、またしても街をムダに回転しながら救出に走る。そしてピン子は叫ぶのだった。「サナ、契約!」と。「承知!」と返事をしたサナは「どけよ、正義の味方のつもりか?」と声を荒げるDV夫に向かってこう言い返す。「正義など私にはない。握り飯、1つ分の仕事をする。それだけ」。激しいアクションの攻防の末、DV夫に“天誅”を下したサナ。しかし、助けられた妻はなぜかその後、自殺してしまう―――。

 痛快な人情モノだと思っていたら、まさかの後味の悪いエンディング。その意外性を含め、すべてが過剰だ。NHK朝ドラ『あまちゃん』では、アキ(能年玲奈)が「ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ」と言ったが、その言葉がピン子の声で脳内に再生されてしまう。能年ちゃんに言われる分には構わないが、ピン子に言われるとすると、なかなか受け入れがたいものがあるのだけど……。

 ダサくて古くてTOO MUCH。人は新しくてカッコいいものばかりに惹かれるわけではない。この『天誅』のアクの強いこってり味には、どうしようもなく引き寄せられてしまう魔力がある。クセになってしまいそうだ。
(文=てれびのスキマ )

ネタりかより引用しました。

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