2014年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公は豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛。歴史作家の加来耕三さんと「歴ドル」の小日向えりさんが、官兵衛について語った。
小日向「とにかく先見性のある官兵衛は、男性としてもタイプです」
加来「彼は間違いなく、当時のトップレベルの軍師のひとりでしょうね。一緒に秀吉を支えた先輩格の軍師の竹中半兵衛もとても優秀ですが」
小日向「官兵衛とともに『二兵衛(にひようえ)』と呼ばれる半兵衛ですね。私、その2人の友情と関係性にはとても“萌える”んです。何となく半兵衛はクリーンな『白』、官兵衛はどちらかといえば『黒』のイメージがします」
加来「確かに半兵衛は、無欲で芸術家肌な男で『白』が似合うかな。ただ、官兵衛の『黒』はちょっと違うかな。家臣団や家族を、とても大切にした優しい男ですよ」
小日向「あっ! 確かに官兵衛は側室も持たなかったんですよね」
加来「そう。それに、戦国武将にありがちな謀略や惨殺といった逸話も少ない。調べてみても、秀吉の九州征伐の後に豊前に領土をもらった際、反乱を起こした豪族をだまし討ちにした例が一件あるぐらいなんです」
小日向「クセ者じゃなかったんだ! 意外です」
加来「ただ、若い頃はアクの強いところもあったみたいですね。父親が若く引退して、22歳で小寺家という大名家の家老職を継いで、信長支持を説き回ったわけです。鼻持ちならぬヤツというか、エラソーな若造と見られていたみたいだね」
小日向「ところが、ある日を境に変わった?」
加来「有岡(ありおか)城に閉じ込められた経験が、彼の人格を変えたのでしょう」
■鼻持ちならぬ性格を変えた幽閉事件
官兵衛が33歳の時、摂津(現・大阪府北西部と兵庫県南東部)有岡城主の荒木村重が信長に謀反を起こす。村重と旧知だった官兵衛は謀反を思いとどまるよう有岡城に説得に向かうが、そのまま幽閉されてしまう。
加来「監禁は1年間にも及ぶわけですが、牢獄は立ち上がることができないほど狭く、便器から糞尿(ふんによう)があふれるような、不潔な環境だったといいます」
小日向「よく生き延びられましたね」
加来「死に直面したことで、性格もガラッと変わったといわれています。青くささがすっかり抜け、人の気持ちや恩を大事にするようになったと」
小日向「この時、信長は城から出てこない官兵衛も自分を裏切ったと思い、人質にしていた官兵衛の長男を殺そうとしたんですね。それを救ったのが竹中半兵衛」
加来「そう。半兵衛がかくまってあげたんです。半兵衛は官兵衛が幽閉されているうちに病死するのですが、官兵衛はこの時の半兵衛への恩をずっと忘れずに、子孫をもり立てていますね」
■最大の見せ場は「中国大返し」
黒田官兵衛の活躍のハイライトといえば、信長が明智光秀に暗殺された直後の、秀吉の「中国大返し」である。
加来「信長の訃報を知ると、官兵衛はまず、水攻めにしていた備中(現・岡山県西部)高松城の毛利軍と素早く講和を結び、ほぼ同時に堰(せき)を切り、あたりを水浸しにして、追撃の心配をなくすわけです。これだけでも大仕事なのに、彼は2万5000人もの将兵を引き連れて、220キロをわずか7日で移動させました」
小日向「どうやって、そんなすごいことができたんですか?」
加来「うーん。それが最大の謎なんだ。諸説あるんだけど、とにかく騎馬武者を早く戻し、足軽もそれに後れを取らせないように走らせる工夫をしたようだね。しかも前門を明智という狼に、後門を毛利という恐ろしい虎に挟まれ、それを見事かいくぐってみせたわけです。今なら最高の経営コンサルタントといえるでしょう」
小日向「大河ドラマで、どうやって描かれるか楽しみです」
加来「ただ、この緊張の中で、官兵衛はひとつだけミスを犯しました。信長の死に涙をこぼす秀吉に向かって、『これであなたの天下になる』と囁いたんです。この一言が原因で後々、秀吉に警戒され続けることになります」
小日向「後の小田原攻めなどでも大活躍をしたのに、もらったのが九州に12万石と、働きの割に大きな領地をもらえなかったのは、秀吉の不信感が原因だったんですね」
関ケ原の合戦では、官兵衛は息子・長政とともに徳川方に立ち、九州で石田方の勢力を次々と攻め落とした。
小日向「でも、私、官兵衛に関してひとつ許せないことがあるんです。それはあの兜(かぶと)。お茶碗にしか見えない形でダサい(笑い)」
加来「当時の人々の憧れは、お腹いっぱいご飯が食べられる世の中でしたから、官兵衛はみんながそんな暮らしができる世の中を、目指したのかもしれないね」
小日向「深い話があるんですね。ますます黒田官兵衛について知りたくなりました」
▼かく・こうぞう 作家・歴史家。1958年、大阪市出身。奈良大学文学部史学科卒。同大学研究員を経て、執筆活動に。「真説 黒田官兵衛」(学陽書房)などが好評発売中。
▼こひなた・えり 1988年1月17日生まれ。歴史、史跡巡りが趣味の「歴ドル」として知られる。「イケメン幕末史」(PHP研究所)などの著書がある。
楽天womanより引用しました。
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